北海道 釧路・白糠(しらぬか)町出張記


先日、12月6日から3泊4日で、弊社が蝦夷鹿を仕入れている北海道
白糠町の株式会社馬木葉へ訪れてきました。
以前より一度行ってみたいと思いながら機会がなく
今回、念願かなって冬の北海道へ・・・
現地で撮ってきた写真を交えご報告したいと思います。

撮影・記:丸岡 和弘


白糠町とは、たんちょう釧路空港から、西へ車で約30分の所にあり、なぜか東西で分断された釧路市に挟まれて位置しています。当日は、暴風雪が来ていたらしく、着陸態勢のだいぶ前から飛行機が雪雲の中でガタガタとゆれて、タッチダウンの瞬間まで視界が「0」状態でした。とうぜん、滑走路も真っ白な雪で覆われており、飛行機は度々利用しますが、「滑走路に雪が積もっていても降りられるものなのだ」と一人感心していました。

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空港名に「たんちょう」と付けているので、鶴が町のシンボル。釧路と言えば「釧路湿原」があるので、そこに留鳥しているのでしょうか?

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空港のゲートをくぐると、早速あらわれたのは蝦夷鹿が絡む事故に対する啓発の数々。ほとんどの事故は日の入り後に発生しており、夜行性の蝦夷鹿が車や電車のライトに引き寄せられて飛び出してくるそうです。
それにしても、十勝地方から、釧路阿寒温泉周辺、東は根室まで相当数が生息しているのはこれで確認できます。

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しんしんと降る雪の中を、迎えに来ていただいた株式会社馬木葉の松野社長さんのランドグルーザーで白糠の牧場まで向かいしました。約30分で牧場に到着、白糠町が協賛する「松野牧場」という看板と、常々写真では見ていた「株式会社馬木葉」の看板が妙な感覚です。

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馬木葉さんは、もともと牧場主。当然、ミルクを絞るための牛も約80頭飼育しています。ただ、酪農だけで生活をしていくのは厳しいらしく、現在は蝦夷鹿の販売が大きな収入源になっているこのこと。また、サブプライム問題が発生する以前は、馬も高値で売れたらしいのですが、現在はそのころで1/10の値段にしかならない為、現在は種を残す目的の為だけに2頭を飼育しています。ちなみに、健脚な馬はばんえい競馬へ、その他は熊本や群馬へ販売していたそうです。
松野さんが鹿のハンターを始めたのは約20年前、そのころは制限なく増え続ける鹿による農作物への被害が問題になっており、何らかの対策が必要になっていました。白糠市から蝦夷鹿駆除に対する補助金が出るようになりましたが、現実は経費の方が高く、だからといって現在のように鹿肉が珍重されている状態ではなかった為、なかなか思うように駆除が行われていなかったそう。そこで、一念発起した松野さんが鉄砲の免許を取り、食用として流通ルートに乗せられるように様々な改善を行った結果、現在のように鹿の狩猟が商売として成り立つようになったようです。

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では、さっそくハンティングの用意。もちろんまずは鉄砲の弾が必要です。松野さんが使用するのは主にライフル、時々至近距離で蝦夷鹿を打つ際や野鳥を打つのにショットガンを使用します。そこで使用される弾はすべて松野さんがご自身で用意するそうです。弾の基本的な構成は、薬きょう、そこに入れる火薬、火薬を爆発させるための雷管、そして弾丸です。この火薬の量が若干でも異なる場合には、狙いどうりに弾が飛んでくれない為、その日の湿気や気温などを考慮して、打ちながら少しずつ調整していくそうです。
弾丸とはいっても、ライフルの弾丸は先がそがった円錐上になっています。蝦夷鹿のような大きな動物を一発で仕留めるために、ダメージ大きい特殊な弾丸を使用します。写真の通り、ターゲットにあたると、弾丸の先がキノコ状に広がるホローポイント弾。そして、通常は鉛でできている弾丸は、環境に配慮した銅製になっています。
そのコストは、1発約500円。一頭を仕留めるために何発も使用するとすぐ赤字です。

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早速ハンティングへ。白糠町は、町全体が低い山で囲まれており、そこには白樺や楓、山モミジなどが自生しています。すでに葉っぱはすべて落ちており、むき出した大地と色を失った森が濃い茶色をしており、まさに蝦夷鹿の色。完璧なカモフラージュを施された鹿を愛用のランドクルーザーにまたがって探しに行きます。
しかし、あれだけ事故を起こしている鹿でも、1時間、目を皿のようにしながら探してもまったく見かけることがありません。それは、狩猟をしている時間が決まっているからであり、その時間を知っている賢い鹿は、山の奥に潜んでいるのです。
約2時間後、松野さんが静かに落ち着いた声で「いた」と言いました。その方向を見てみると、数等の鹿の群れがゆっくりと草を食んでいました。
松野さんはゆっくりと車を止めて、音も立てずに木陰へ、一呼吸おいてから「ズドーン」、大きな銃声が響きました。すると、約100メーター程先にいた群れは一斉に山の奥へ、「とまれとまれ」と念じるようにつぶやく松野さんの声、そしてもう一発。
自分の目では当ったかどうかも分からないので、いそいで鹿がいたあたりへ走っていくと、見事に2頭の鹿が顎を打ち抜かれて倒れていました。
この顎を打つのは食用の鹿ではとても重要なことになります。そして、約100メートルの距離から2頭とも見事に顎を打ち抜く技術は道内でも名が通った松野さんだから可能なことだそうです。
なぜ顎、または首を狙うのか。胴体を撃ってしまうと、食用部分である肉が傷むことになります。また、心臓や脳を撃ってしまうと心臓が止まってしまい、大切な血抜き作業ができなくなってしまいます。顎や首を撃たれた鹿の心臓はまだ動いており、頸動脈を切ると放血ができるため、独特の獣臭が血から肉へ移ることがないのです。
また、僅かでも急所をそれると、鹿が暴れたり走り回ったりします。その後力尽きて死んだ鹿の肉は、茹であがった肉のように熱く、もっさりとした状態になります。それは肉としての品質の劣化につながりますので、食用の鹿を仕留めるには熟練の技術が必要なわけです。

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鹿が倒れた場所まで来ると、まず愛用のナイフで頸動脈を切断します。すると血が勢い良く吹き出します。そして、小腸・大腸や胃など可食でない内臓は取り出し、放置はできない為ごみ袋に入れて持ち帰ります。

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鉄砲を撃つと、その音を聞きつけてカラスが集まってきます。人間のおこぼれを狙っているそうですが、それにしてもどこからこれほどのカラスが集まってくるのでしょうか?
鹿を仕留めると、ランドクルーザーに取り付けてある荷台まで鹿を引っ張ってきて、そこに乗せるとゴムバンドで縛り付けて持ち帰ります。写真ではわかりずらいですが、さっきまで飛び跳ねていた鹿はまだ温かく、胴体部分からは湯気が出ています。  
ここから加工場まで持ち帰る際にも大切なポイントがありました。鹿の両足を閉じた状態で運ぶと、鹿が持っている熱で肉が蒸れてしまいます。その為、両足を開いた状態で車にのせる必要があるのです。

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牧場の一角に設けられた加工場まで持ち込まれた鹿は、必ずその日の内に皮をはぎ取り、出荷されるパーツまでに分解します。そうすることで、汚染が少なく鮮度の高い鹿肉を提供できます。
この皮の剥ぎ取り作業、牛や豚、羊などを生産する大規模な工場では機械で行いますが、ここでは一頭づつナイフで薄皮を切剥がす要領で行います。
写真で確認できる通り、頭は若干雑に扱われていました。鹿の舌やほほ肉、脳みそなどは美味しいらしいですが、分解してパーツにするのが大変らしく取っていないそうです。雄鹿の立派な角や毛皮は剥製屋さんが買い取ってくれるそうなのでとっておいてありますが、その他は処分だそうです。

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皮を剥がされた鹿は、いわゆる枝肉の状態。これをチェーンソーで背骨から縦に切断すると半丸です。
基本的には、まずウデ肉を骨ごと取り外します。ウデ肉とは前足の肉のことで弊社の商品で肩肉。そして次にもも肉を骨より取り外します。そこには、内モモ・しんたま・外モモ・ランプ・スネ肉がついています。骨付きの注文には、スネ肉からランプまで骨付きの状態で取り外します。次は、背中からロース肉。そして、ヒレ肉。最後にチェーンソーでバラ肉を骨ごと切落します。約60kgを超える

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鹿の解体には、松野さんの次女ちえちゃんも参加します。鉄砲も撃つそうですが、技術はお父さんにまだまだ及ばないそう。しかし、解体の作業は手慣れたもので瞬く間に各パーツに分かれていきます。馬木葉さんの商品はいつも品が良いのは、娘さんの力によるところが大きい気がします。
ちなみに、可食内臓である心臓・肝臓・腎臓は基本的にサービス品として出荷しています。(約¥600/kg)。鹿の内臓に通る血管には寄生虫がいるため、食するには加熱が絶対条件ですが、ソースを作る際などに使用するために依頼されるシェフも多いです。寄生虫は血を吸う虫の「ヒル」のような茶色くて、のっぺりとした形をしています。一つの内臓からうようよと這い出てくることもありますので、注意してください。基本的には血管を切っていくと内部にくっ付いています。

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左から、契約ハンター小西さん・ちえちゃん・松野さん

この出張で確認できたことは、松野さんが凄腕のハンターであること。松野さんはお酒が好きなので、滞在中は毎晩釧路で飲んでいましたが、周りの人はみんなが松野さんの腕を知っており、実際に趣味のハンターのガイドハンターとしても働く松野さんを頼って、多くのセレブが北海道に遊びに来ているそうです。
また、優秀なハンターでありながらも、その食材としての品質を理解しており、契約するハンターはすべて専業の凄腕、その為多くのシェフからの信頼を得ております。

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P.S.
白糠には熊や真鴨も生息しています。熊は食用としては知名度が低いため(美味しいそうですが)、また冬場は冬眠するためにジビエの季節に獲れないなど、商売としては難しいので獲っていないそうです。しかし、白糠では熊に人が襲われるなどの被害が出ている為、実際にはもっとどこかが補助金を出してでも頭数を制限しなければいけないそうです。
真鴨は、一羽単価がどうしても鹿よりも低い。また、撃った鴨を探すのが大変で、犬の力が必要になる。とうぜん、そのためには犬を訓練しなければならないなどコスト高になり、現在はほとんど獲っていないそうです。

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